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1C4.統合失調症で工場を退職

 2011年のことである。「1C3.退院それから」で書いたように、私は鉄道会社の工場で働くことになった。履歴書や職務経歴書に熱烈な自己PRを書き、書類選考を通過した。そして面接も頑張った。ただ、面接後の健康診断の問診票で「精神の病気」という欄があった。ここには何も書かなかった。精神の病気を患っていては、今までと同じように不採用になると思ったからだ。
 そして採用。新しい職場への期待を胸に順調なスタートを切った。はずだった。
 職場の人間関係は良好、そして仕事もぼちぼちこなした。人並みに。
 私は実家から職場まで遠いので、寮に入った。一人気ままにのんびりと過ごすはずだった。

 しかし、また調子が悪くなったのである。2011年5月から、寮の部屋から出るのが怖くなったのである。そして幻聴に悩まされ始めたのである。部屋にいるときは「部屋から出たら、殺されるぞ」「盗聴されているぞ」、外出中は「あの親子を殺せ」「あいつはお前のことを笑っているぞ」などという声が聞こえるのだ。
 もう、辛くてたまらなく。会社では明るく振舞っていたが、寮では「もう助けて下さい」と涙を流していた。

 会社では、同期の2人がうつ病で一人が退職している。
 私は寮から実家に帰省するのは月1回だったが、この5月以降は2週間に1回、6月以降は週1回帰省するようになっていた。
 実家では落ち着いていた。幻聴も聞こえない。やはり寮は会社の先輩や上司がいるから心が休まる時がないのだろう。
 しかし、実家から新幹線で寮に帰るときは凄く不安感が出た。何かわからないけど、凄く怖かった。

 このままではいけないと、私は同期の人に統合失調症を打ち明けた。その同期の方は凄く良い方で毎日「今日の調子はどう?」と優しく聞いてくれた。
 また、「秘密は守る」という約束で、産業医にも統合失調症を打ち明けた。しかしこれは後に裏切られることになる。

 この会社では、1年間契約社員で、その後正社員の昇級試験があり、それに合格すると正社員になれる。正社員になれなかったら、そこで退職となる。
 そして、正社員の昇級試験が行われた。

 職場の方は「よっぽど勤務態度が悪くない限り、正社員になれる」と誰もが言っていた。
 正社員の昇級試験は一般常識と面接、健康診断と問診票記入だった。
 ここで私はミスを犯す。問診票の「精神の病気」にチェックを入れ「統合失調症」と書いてしまったのだ。でも、それくらい私は精神的に参ってしまっていて、産業医の助けを必要としていた。それは私からのSOSだったのだ。産業医からはどんな薬を飲んでいるのか、どんな症状がでているのかを根掘り葉掘り聞かれた。私はそれに正直に答えた。

 正社員昇級試験の結果発表の日、私は落ちたことを上司から伝えられた。
 そして、別室に案内され不合格の理由を聞いた。
 「君は、問診票に何か書いただろう?それが落ちた理由なんだけど」
 「私もね、産業医から色々と話しを伺って、『どうですか?』と聞いたら、『厳しいですね』と言われたよ」
 「君はよく頑張ってくれていたから、私も悔しい」
 そんなことを伝えられた。
 あの時、私は問診票に精神の病気を患っていると書かなければ、今は正社員として頑張っているのだろう。

 精神の病、それはまだ社会では理解されない病気で、隠し続けて行かないといけない病気かもしれない。
 最近は、少しずつ理解され、そういう病気をサポートする動きが見えるけれど、私の体験ではまだまだだとおもう
 その会社は、メンタルヘルスの小冊子を社員に配布していたので、「私のことも理解してくれるかもしれない」と思ったが、考えが甘かったようだ。

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